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下瀬川 徹 会長のご挨拶

時代の変化を鋭敏に感じ取り、革新的技術を適切に取入れて
歴史ある本協会に新たな息吹をもたらすことができればと考えています。

公益財団法人 宮城県対がん協会
会長 下瀬川 徹

この度、公益財団法人宮城県対がん協会理事会ならびに評議員会の議決により、令和2年7月1日より会長に就任することになりました。恩師でもあります前会長 久道 茂 先生の後継者として、歴史と伝統ある宮城県対がん協会の運営と将来を担う重責を痛感しています。振り返ると、私が東北大学医学部教授に選任された当時の医学部長が久道先生でしたから、先生には今日まで私の人生を導いていただき、今回、このような栄誉ある役職をいただきましたのも、運命的なものと感じております。

私は昭和54年に東北大学医学部を卒業後、東京都立駒込病院にて2年間の内科初期研修を行い、さらに同院消化器内科に所属して後期研修を修めたのち、母校の第三内科に入局しました。当時、診断が難しく「暗黒の臓器」と呼ばれていた膵臓に興味を持ち研究を始めました。膵臓の外分泌機能や膵臓や消化管の新しいペプチド性神経伝達物質の研究に没頭しましたが、入局して間もなく山梨医科大学の小林繁教授の教室に内地留学の機会を得、消化管ホルモンや神経ペプチドを可視化する免疫組織化学法を学びました。この研究により多くの国内外の研究者と繋がりができ、昭和61年から米国オクラホマ州立大学、その後、イリノイ州立大学で3年余にわたる研究生活を経験することができ、私の研究人生の基盤がつくられたと思っています。帰国後は、膵臓の神経ペプチドの研究を展開するとともに、各種膵疾患の臨床研究にも携わり、多くの研究成果を発表することができました。このような研究業績が評価されたのでしょう、平成10年9月に東北大学医学部教授を拝命し、翌年4月からは大学院重点化によって内科学第三講座から分派・新設された消化器病態学分野を担当することになりました。以来、19年余にわたる教授在職中に200名近くの大学院生の学位の指導を行うとともに、学内では、東北大学病院長、東北大学副学長ならびに東北大学医学部長にも選任され、貴重な経験をさせていただきました。研究面では厚生労働省 難治性膵疾患調査研究班の班長を6年間務め、多くの研究成果を世界に向けて発信することができました。平成24年から日本膵臓学会理事長を4年間、平成26年からは日本消化器病学会理事長を4年半務め、現在は日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝臓学会、日本消化器外科学会ならびに日本消化器がん検診学会を束ねる国内でも最大規模の学術組織、日本消化器関連学会機構(JDDW)の理事長を務めています。

宮城県対がん協会との関わりも深く、平成11年から常任理事、平成12年から副会長、平成24年からは副会長理事、平成30年から運営顧問を務め、当協会の運営に関って参りました。この間、平成13年度に「黒川利雄がん研究基金」の運営委員に選任され、平成14年度以降は現在まで運営委員長を務めさせていただき、多くの研究者のがん研究に支援を行って参りました。平成12年から平成30年まで胃がん対策ならびに大腸がん対策委員長、肝・胆・膵疾患委員会委員長も務めさせていただきました。

宮城県対がん協会は昭和33年に、教室の大先輩で当時、東北大学総長でいらした 故 黒川 利雄先生により設立されました。国民病として恐れられていた胃がんによって失われる多くの命を救うためには早期発見が重要であり、そのためには患者を待つのではなく、自ら出向いて患者の拾い上げが大切とのお考えのもとに、現在の胃がん検診の基礎を作られ、体系化して「宮城方式」と呼ばれるがん検診のモデルを確立されました。その精神は、第二代会長 故 山形 敞一先生、第三代会長 故 斎藤 達雄先生、第四代会長 故 大柴 三郎先生そして前会長の久道 茂先生に綿々と受け継がれ、東北大学医学部の多くの教室と教室員、宮城県の福祉行政、市町村、宮城県ならびに仙台市医師会など、各方面の多大なるご支援により、今日迄、がん検診を広く普及・浸透させ多くの方々の命を救うとともに、設立以来半世紀以上にわたって、日本のがん検診の牽引的立場を堅持してきました。

一方では、わが国では超高齢化が進行し、人口減少も急速に進んでおり、がん検診そのものが大きな転換期を迎えていることを痛感します。より安全に、そして確実かつ効率よく各種がんを早期発見し、がん検診事業が多くの方々に理解され、信頼のもとに受け入れていただく一層の努力が必要です。従来のX線による胃がん検診に内視鏡検診が選択肢として加わり、このような新たな検診スタイルをいかにして県域全体に拡大していくか課題の一つです。また、これからの医療には人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)、もののインターネット(IoT)が重要な役割を果たすと予想されますが、がん検診領域も例外ではないでしょう。時代の変化を鋭敏に感じ取り、革新的技術を適切に取入れて歴史ある本協会に新たな息吹をもたらすことができればと考えています。

宮城県対がん協会は老朽化したがん検診センターの新築が目下の大事業であり、全職員ならびに関係諸氏の悲願でもあります。一方では、昨年12月に中国武漢市が起源とされる新型コロナウイルス感染症は地球規模のパンデミックとなり、さまざまな社会活動に深刻な打撃を与えています。検診事業の盲点をついた災害でもあり、当協会の事業も過去にない大きな打撃を受けています。大変多難な船出となりましたが、新しくがん検診センター所長に就任された加藤 勝章先生ならびに協会の全ての職員とともに力を併せてこの困難を乗り越えていきたいと思っています。皆様にはこれまで以上のご指導ならびにご支援を賜りますようお願い申し上げ、会長就任の挨拶とさせていただきます。

略歴

  • 出身地

    青森県弘前市

  • 1979年3月

    東北大学医学部医学科卒業

  • 1986年12月

    米国留学

  • 1997年7月

    東北大学医学部附属病院 助教授

  • 1998年9月

    東北大学医学部 教授

  • 1999年4月

    東北大学医学系研究科消化器病態学分野 教授

  • 2012年4月

    東北大学病院長、東北大学副学長

  • 2015年4月

    東北大学医学研究科長、医学部長

  • 2017年10月

    東北大学名誉教授、みやぎ県南中核病院企業団 企業長

  • 2019年2月

    日本消化器関連学会機構(JDDW)理事長

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